2012年6月27日水曜日

寺崎先生が来ました

6月24日午後6時、新宿区内の私たちの小さな稽古場に、演出家の寺崎裕則先生がいらっしゃいました。オペレッタ好きの人はもちろん、オペラに関心のある人なら、先生の名前を知らない人はいないでしょう。日本オペレッタ協会の創設者にして、日本オペレッタ協会の最高顧問、まさに日本におけるオペレッタの第一人者です。 緊張に包まれる稽古場。普段やったこともない発声練習や準備運動など、まあ、大地震の前触れの小動物の蠢きみたいに不可思議な光景です。最初に見ていただいたのは第1幕フィナーレ。ひととおり通した後に、先生の感想から始まります。「役者の人の台詞が自然じゃないんだよね。台詞を台詞として話してしまう。それじゃダメなんだ。自然じゃなくちゃ。」これを受けて、3人の元老員議員たちへの指導です。台詞は一言一言止められ、登場の仕方、歩き方、表情、仕草まで細かく細かくつけていきます。もちろん私たちもこれまで一所懸命作ってきたので、誇りはあります。自信だってちょっとだけあります。でも先生は許してくれません。「こうでしょ!こうじゃなきゃダメでしょ!」でも、それがうまくできると「そうそう!ほら、そうなるじゃない!できるじゃない!素晴らしい!」だんだんと稽古場の空気が熱くなります。 「自然に!」「役の性根は?」…アマチュアだからって容赦は一切なし。ときには机をたたき、ときには立ち上がり役者の傍らで演じてみせる。その情熱と気迫は御年79歳という年齢をまったく感じさせません。そうして、いつのまにか私たちは寺崎ワールドに包まれていったのです。 あっという間の3時間が過ぎ、帰りの道々、先生が私にこう言われました。「今日は楽しかった。アマチュアは素晴らしいよ。だって砂に水が吸い込まれるようにどんどん吸収して、どんどん上手くなっていく。僕はそれを目の当たりにして感動的だった。へんに手垢のついたプロだと話を聞こうとしないんだ。素直っていうのは本当に大切。」 寺崎先生も楽しんでくださった。僕たちも非常に刺激を受けた。あとのお酒が美味しかったことは言うまでもありません。日付が変わる頃まで、飲んで、話して、笑って。公演の成功を予感できた一日でした。 ついに寺崎御大の登場です! 真剣な指導 思わず立ち上がり… 稽古場の空気も変わります ガレリア座至福のとき もちろんこれも欠かせない!

2012年6月26日火曜日

HPしました

HP(ハーペー)といいます。ホームページではありません。もちろんホームランでもありません。Haupt Probe=これもドイツ語で言う総練習の意味です。いつものガレリア座なら、本番1週間前にやるのですが、余裕綽々の今回のプロジェクトでは2週間前の設定。それも再び砂町です!砂町銀座商店街の底知れない魅力はGPの報告でもお知らせしたとおり。今回はヘアメイクを担当してくれるラルテの長谷川さんと楽しく“砂銀ブラ”です。美味しいもの大好きの長谷川さんは、すでに稽古場に来る過程で、この砂町の素晴らしさに圧倒されていました。まず二人で、究極の焼き鳥屋へGO!ねぎまと皮とレバー、そしてお供に缶ビール!たれの旨いこと!レバーの味のよろしいこと!たぶん金管セクションが私たちの後に続いたはずです(笑)。さらにおでん屋で、ちくわをGET!立ち食いのおでんがこれまた旨い!クリームパン、赤飯にぎり、マグロ串カツ、 餃子と唐揚げを買い込んで稽古場に帰還。GPに続いて稽古を見に来てくれた照明の寺西巨匠を尻目に、長谷川さんと夕飯を楽しみました。ああ、幸せ!…あ、通し稽古ですよね。うん、良かったんじゃないですか…。 これがスコア 八木原の両腕 照明の巨匠寺西伯 僕のハセちゃん

2012年6月20日水曜日

もうすぐ2週間前

今度の週末、土曜日にHP(ハウプトプローベ)という総練習があります。言ってみれば本番前の総仕上げです。このところの私に課されている仕事は、もう中身の演出とはほとんど関係なく、弁当の数の調整(単価の折衝)、駐車券の手配、楽屋の割振、アナウンス原稿の作成、打上げの店との交渉…いわゆるプロデューサーの仕事に集約されます。演者たちは本当によく仕上がってきました。平日は忙しく責任のある仕事をこなしながら、みんな僅かな週末の休日に意識とエネルギーを集中させて稽古や準備にあたってきました。本番のわずか3時間程度のために、そりゃ厖大な時間と労力と金をかけて! 私は思うんです。好きなことがあるのは素敵なことだと。もちろん疲弊もするし、少しは嫌な思いもするのだけれど、ただ日々の生活に追われているだけでは、どうして生きている価値があるのだろうと。もちろん、それがオペラでなくたっていいんです。サッカーの応援でも、野鳥の観察でも、畑仕事でも、ラーメンの食べ歩きでも、ボトルシップの製作でも、我が子のお受験対策でも…。もし、何か楽しいことがあったらいいな、と思っている人がいたら、ぜひガレリア座に遊びに来てほしいと思います。いろんな職種の人が、いろんな年齢の人がいて、おんなじ目標に向かって頑張って楽しんでいます。 本番直前の様子を書こうと思ったら、ただの勧誘記事になってしまいました。勘弁! でも、次の舞台はサントリーです。どうぞ奮ってご参加ください!

2012年6月16日土曜日

高津へ行きました

ここへ行くようになると本番を感じます。高津装飾美術株式会社。京王線国領駅からほど近くにある道具屋さんです。でも、そんじょそこらの道具屋さんではありません。映画やテレビのエンドロールで、ここの名前を見ないものは絶対ない!と断言できる日本屈指の道具屋さんです。いわゆる小道具、持ち道具の類で高津にないものはないのです。今回のガレリア座オーダーは比較的少なく、まずは第二幕に出てくる公爵家のテーブルと椅子。同じく二幕のテーブル上の果物皿、菓子皿、スープ壺(チューリンと言います)。さらに二幕の年季の入ったデッキブラシを一本。果物皿と菓子皿は急に思いついて、下見に行く日の午前中にオーダーしたにもかかわらず、こちらの希望通りの物が用意されていました。以前の公演では、ネコ脚付のバスタブ(第10回公演「天国と地獄」使用)とか、和物の人力車(第20回公演「美しきエレーヌ」使用)とか、ずいぶん妙なものをオーダーしたものです。でもなんでもあるのが「高津」です。下見に行くとワクワクするのは、大量に保管されているそうでなくても面白そうな道具の上に、NHK「梅ちゃん先生」の札とか、日テレ「ぐるナイ」の札が貼ってあるのです。そう、映画やテレビで見ている道具がそこらに並んでいるわけです。ああ、そういえば見たかも…なんて思いながら道具を見る愉しみ。偉そうにガレリア座の札が付いた道具も一緒に並びます。ちょっと誇らしい。 今回も美術監督、長谷部君が同行しました。 人物譚で長谷部君をとりあげた際、彼は高津であれこれ迷うので困ったものだと、私が書いたのが気になっていたらしく、今回は一時間足らずの滞在で高津を出たとたん、口の重い長谷部君が私にこう言ったのです。「今回は早かった…。」

2012年6月12日火曜日

GPしました

GP(ゲーペー)しました。General Probe=ドイツ語で言う総練習の意味です。仕上げ練習の一つとして、本舞台ではないけれど、本番の舞台の大きさを確保できる大きな会場で行います。オーケストラも入り、歌手は衣装やメイクも本番さながらに施します。照明、音響、ヘアメイク、録画等のスタッフが見守る中、稽古は粛々と行われました。音楽や台詞はずいぶんとこなれてきて、危ないシーンもいくつかあったにせよ、通し稽古としてはなかなか順調な仕上がりとなりました。でも本題はそこではないんです。今回のGP会場は私の超お気に入り、江東区の砂町文化センター。この場所、日本でも有名な商店街「砂町銀座商店街」のど真ん中にあります。砂町銀座、略して“すなぎん”。TVでも、しょっちゅう紹介されているのですが、とにかく安くて旨い惣菜が溢れている!私の昼飯、肉屋のボリュームたっぷり弁当がたったの250円!から揚げ、焼き鳥、おでん、うま煮、肉まん、ポテサラ、おむすび、おはぎに団子、餃子、焼売、焼き魚、赤飯、あさりの佃煮…いやいや、もうお腹いっぱい買い込んでも1000円になかなか届かない!ワンダフル!ビューティフル!イッツ・ア・ドリーム・ワールド!!いつも稽古時間がない!と喚いている私が、ここだけは絶対に一時間の昼休憩、夕方休憩を譲らない。手慣れた団員は必ずタッパとマイ箸持参。これぞ“すなぎん”の掟!当団の金庫番、会計担当の宮崎氏による食べ歩きマップまで登場し、興味関心は“食”に集中するのです。幸せ溢れる砂町銀座。次の大きな練習HP(ハーペー)=Haupt Probeも、じつはここ砂町で行われます…ふふふふ。この会場を取ってくれたアシスタント・プロデューサーに拍手喝采!ああ、楽しみだこと…。 座付きオケの魅力 これぞ総稽古 1幕フィナーレ 2幕フィナーレ

2012年6月4日月曜日

稽古風景より

いよいよ公演一か月前となってきました。制作統括である私のところには、照明・音響・大道具等の外部業者との打合せや、プログラムの執筆、道具等の確認、運搬計画に始まって、弁当の数のチェック、駐車券の手配に至るまで、多くの仕事がどどどっと押し寄せます。こうなると、ああ、もう本番なんだなあ…と実感するのです。ただ、今回の公演、いつもと違うことがあります。それは、稽古の中身の濃さ。いつもより台本を早めに脱稿し、演出も早めに付けたため、稽古にかける時間が少しだけ長いんです。つまり、私も演者もじっくり台本やスコアに向き合える。微妙な心理の変化をどう演じていくか、作りこみをする時間がいつも以上にあるのです。楽しいですよ。どうしてここにピアニシモの表示が書いてあるの?同じフレーズが繰り返されるとき一回目と二回目をどう変えるの?ちょっと色気が足りないなあ…。会話しているのに相手を意識しないのはダメだよね…などなど。ソリストは苦しみながらも、一つの成果が演者を大きく成長させる。この作業が楽しいのです。本当に。合唱だって、その他大勢十把一絡げは許しません。町の人、一人一人に個性がないなんておかしいでしょう?みんなきちんと演じていただきます。要求の高さに驚いた人もいるのでしょうが、これぞガレリア座。隅々まで見て楽しい舞台にしていきたいと思います。どうぞご期待ください!

2012年6月1日金曜日

ガレリア座人物譚~その4

ガレリア座管弦楽団。アマチュアとしては異色中の異色。オーケストラ・ピットに入って活動するのが目的のオーケストラです。その表の顔と言えばコンサートマスター。第一ヴァイオリンのトップ、指揮者の左側一番近くに座っているのが山内美英さんです。記録を見ましたら5代目のコンマスということになります。就任期間としてはガレリア座史上最長のコンマスです。愛称はヤマウチの“チ”の字をとって“ちーさん”。とくに仲のいい私は“ちー”と呼び捨てにします。オケ練習は演出家にとって暇なので、暇を持て余した私が“ちー”“ちー”と連発するのですが、これがどうもお気に召さないらしく、大抵は怒られるか、嫌がられるかします。それほど仲がいいのです。根が真面目で、まちがいなくシャイな“ちーさん”ですが、そういう人を無理やり陽の当たる場所に引きずり出してみたくなるのが演出家です。本当に私は“ちーさん”に優しいのです。 異色のアマオケ、ガレリア座管は飲み会も異色で、通常、練習後のお酒にあまり付き合わない弦楽器のメンバーが率先して飲みに行きます。むしろ仕切ります(アマもプロも飲むのは管が相場です)。そんな呑兵衛軍団を仕切り、一滴も飲まないのに飲み会には顔を出す“ちー”は本当に偉大なコンマスです(あ、音楽性ももちろん素晴らしい!)。

ガレリア座人物譚~その3

ガレリア座の“監督”4人目は美術監督。 このポストがいつから創設されたか調べてみたところ、2006年の第18回公演「モンマルトルのすみれ」(カールマン作曲)で初めてクレジットされています。まだ僅か6年というのに彼の存在感と責任はますます大きくなっています。その口数とは反比例するように…。長谷部和也君。たしか前任の美術担当が、ぜひにと連れてきた若者は、私の必要とする小道具をいつの間にか準備してくれました。私のあいまいな指示も、雑然としたイメージも彼にかかると明確な“モノ”となって現れます。「いや、すごいねえ。見事なもんだ!」私がどんなに讃えても彼の反応は決まって笑顔ひとつ。驕ることなく、偉ぶることなく、多くを語ることなく、文字通り“黙々と”仕事をこなしていく職人、それが長谷部君です。 彼の仕事を信頼し、美術担当スタッフだった彼に「美術監督」を任せたいとプロポーズしたときの反応を覚えています。はっきりした声で「やります」と一言。見かけよりずっと若い年齢に似合わず、監督職の厳しさを理解した力強い一言でした。以来、彼とはガレリア座以外でも多くの舞台を創ってきました。じつに頼れるスタッフです。でも、一緒に高津小道具の倉庫で道具選びをしているときの彼だけは許せません。じつに、じつに優柔不断で、気の短い私をイライラさせるのです。「やへ(長谷部君の愛称)、どうするの?こっちの白いテーブル?それともこっちの茶色のやつ?どっちがいいの。僕はどっちでもいいんだ。決めるのはあなただから。」これが延々繰り返されるのです、テーブルでも、椅子でも、ソファでも!!それさえなければ、やへ君は最高の美術監督なんですけどねえ。